フォックスキャッチャー

フォックスキャッチャー、見ました。2015年2月23日、シネ・リーブル池袋にて。


http://www.foxcatcher-movie.jp/ 

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出演はチャニング・テイタム、スティーブ・カレル、マーク・ラファロ。監督は『カポーティ』『マネーボール』を手がけたベネット・ミラー

冒頭から追っていきます。

タイトルバックでは大富豪であるデュポン一族がキツネ狩り(foxcatcher)をしている映像。デュポン家に保管されていたフィルムか何かでしょう。やたら広大な敷地、広大な森林と平地。馬に乗っている少年のうちの1人はジョン・E・デュポンなのでしょうか。

続いてマッチョな白人男が一人でレスリングの練習をしている場面。革張りの人形に思い切りスープレックスを決めるチャニング・テイタム。見ようによってはセクシーです。

そのチャニング・テイタムが演じているマーク・ラファロ。1984年のロサンゼルスオリンピックではレスリングで金メダルを獲得。しかしその栄光は微塵も感じられないような生活の様子が描かれていきます。小学生相手の講演会のギャラは20ドル。ジャンクフードを死んだ目でむさぼりながらハードなトレーニングを続ける日々。

マークの兄・デイヴは家庭を持っており、2人の子供がいる。マークに比べれば幾分充実しているように見える。マークの困窮に出口は見えない。

そこに現れるのがジョン・E・デュポン。マークとデイヴを自分の所有する土地に住まわせてトレーニングするよう提案します。ジョンは有り余る財力をアスリート(その中でも自分好みのレスラーたち)育成に活用しようと考えたのです。

マークは移住を決意します。拒絶して今の貧乏生活を続ける理由がないからです。充実した施設と、同レベルのパートナーと、多額の報酬。競技者として集中できる環境=チーム・フォックスキャッチャーの一員になる事を素直に受け入れるマーク。一方でデイヴは家族との生活を選択して移住を拒否。

ここからマーク、デイヴ、そしてジョンの静かなる三角関係が描かれていきます。逆に言うと物語としてはあまり進展が無いです。

ジョンの思想に少しずつ感応して共感していくマーク。ジョンと共にデイヴの自宅を訪問する場面、ジョンが姿を見せてもロクに挨拶しないデイヴの家族。ジョンは気にしてない様子なのですが、マークは「デュポン家のす、すごい人なんだぞ! 挨拶しろよ! ベッドに座ったままってどういうことだよ!」と怒ります。

こういった地味な心の変動をじっくり描いていく展開。正直言ってすごく面白かったです。ジョンの心がどう動いていくのか、いつの間にか自分がすごく集中して観ているのに気付かされるのです。

しかしその好奇心も、後半には失速しちゃいました。

マークはジョンにそそのかされてコカインだかヘロインだかに手を出し、レスリング選手としてのキャリアを実質的に終わらせます。

それと前後してジョンは「やっぱりデイヴを呼ぶ!」と言い出し、高待遇に惹かれたデイヴは家族と共に移住。蜜月の兄弟関係が復活し、ジョンの精神状態に揺さぶりをかけます。マークというおもちゃに飽きたジョンがもっと良いおもちゃを取り寄せたような感じ。

ところがデイヴはマークより数段頭が良く、家庭もしっかり作り上げた大人の男。うまくコントロールできずにストレスを抱えていくジョン。

マークもマークで、ジョンに対する敬意がどんどん失われていき、やがて完全に心が離れます。

その結果に納得が出来ないジョンはデイヴを唐突に射殺。映画は終わりです。

前半は心の動きが割と理解できるし、だからこそラブロマンスとして面白いんですけど、後半は展開にカオス感が増して(脳味噌が付いていけなくて)、割とどうでもよくなってしまいました。

ジョンの、大富豪がゆえに常識を大きく外れた行動の数々はそこそこ面白いんですけど、そうそう何度も笑えるってわけでもないし…

ノンフィクション映画として製作して、その結末が分かってる事を前提にして公開・上映しているのに、その結末に達したところで「はい、あとは字幕で説明します」って手法を取られるのは…映画としての感動が突き抜けないです。アメリカンスナイパーも似たようなものなんですけどね。

今作の監督ベネット・ミラーの作品は『カポーティ』も『マネーボール』も地味で静かで、その中に渦巻く感情を描いているように見えて結局は面白みに欠ける映画だと感じたのですが、今回のフォックスキャッチャーも同じカテゴリでした。

ノンフィクションの題材になるような人物を探して淡々としたトーンで撮り続けるんでしょう。自分には必要のないタイプの監督だなーという結論です。つまらないレビューですみません。