ジョン・ウィック

ジョン・ウィック 見ました。
引退していた殺し屋が再び覚醒して観客の求める新鮮な殺戮シーンを見せてくれる映画。
 
デンゼルワシントンが覚醒する『イコライザー』や、ウォンビンが覚醒する『アジョシ』も同じタイプのストーリーなのですが、今作で僕らのために覚醒してくれたのはマトリックスという超代表作を持つキアヌリーヴス。


主人公ジョンウィックがなぜ強いのか、どのようにして強くなったのか、などの背景はほとんど描かれません。
 
逆に今作は、ジョンウィックという男がどれくらい強いのかを描く事に集中的なこだわりを見せてくれます。
 
アクション描写のフレッシュさやスタイリッシュなカメラワークで見事に形作られていくジョンウィック。予告編を見れば一目瞭然、リアリティを超越した戦闘能力を各シーンで見せつけてくれます。
 
しかしジョンウィックというキャラクターを際立てる手法として、彼の強さを知っている者が彼のカムバックを知って動揺する様子で表現するところが面白い。
 
あらすじ書きます。
 
妻と死別したばかりのジョンウィックが、妻が残した小型犬と共に生活を立て直そうとしていたところ、ある男に犬の命を奪われる。ジョンウィックは封印していた己の能力を解放し男への復讐を果たそうとする。
 
復讐と書きましたが、むしろ仕置人要素が強いですね。「街のダニども、全員死刑に処す」(狼たちの死刑宣告)というか。
 
序盤の展開はやや端折り気味のトントン拍子。犬との思い出作りシーンも極力少ないし(でも犬はめちゃくちゃ可愛い)、マフィアに巻き込まれる展開も強引すぎるくらい。
 
ジョンウィックはガスステーションでたまたま遭遇したロシアンマフィアのボンボンに目を付けられて自宅に踏み込まれるのですが、この導入部の簡素さにはちょっぴりガッカリ。いくらなんでも…ねえ。
 
ジョンウィックの逆鱗をくすぐる序盤が終わると、マフィア側のシーンが増えていくのですが。
 
ジョンを襲ったのは、ジョンがかつて仕えていた大物ロシアンマフィアのヴィゴの息子ヨセフ。
 
ヨセフがジョンの犬を殺し、ジョンの愛車を奪い取ったと知った瞬間のヴィゴのリアクションがすげー笑えます。

「Oh...」

ですからね。
この映画、ハードボイルド調になりきらず所々でハズした笑いを盛り込んでくるところがとてもフレッシュ。トムクルーズ主演の珍味満載映画『アウトロー』とすごく似たテイストで、とても好き。
 
ヴィゴはジョンの報復を恐れてジョンに電話をかけるも、交渉決裂。ジョンの自宅に刺客を派遣するのですが、ジョンは難なく返り討ちに。そこに駆け付けた警官は死体を見て見ぬフリをしてスルー。緊張からの緩和。ジョンとその警官はツーカーの仲なんですね。しかし、どんな経緯で友好関係に至ったのかは説明しない。
 
ジョンは死体処理業者を呼び寄せ、自宅を綺麗にクリーニング。この業者とも顔なじみっぽいジョン。

ここで登場するのが、処理業者にジョンが手渡す金貨。説明らしい説明はないのですが、マフィアやその周辺にいる"ブギーマン(殺し屋)"らが取引に使っている意味ありげな金貨。金額の話がほとんど出てこないのもこの映画の面白いところでもある。

自宅襲撃シーンは殺意の波動に目覚めたジョンの戦闘スタイルを観客に提示する場面でもあるのですが、ここでジョンが見せるアクション、制作陣によると「ガン・フー」というそうな。手足による打撃が届く距離でも銃器による射撃を選び、敵を確実に殺害していく。ハンドガンを体の近くで構えて撃つ姿はこれまでの映画で見た記憶がありません。

最初のバトルシーンで顕著なのは「敵の動きをそこまで読み切るのは無理だろ」という、チート感。ジョンの戦闘スタイル自体は理にかなっているっぽくてすごーく強そうに見えるんですが、何度もプレイしているFPSゲームで敵の出現タイミングを完全に把握しているような強さ。

猪突猛進に見えながらもクールさをキープするジョン・ウィックは誰にも止められません。熱量・情報量の多いアクションシーンが続きます。

後半になるとマフィア側の抵抗も激化するし、個性の強いブギーマン達が登場するので「強すぎだろ」という違和感は軽減されていきました。

しかしマフィアのアジトにある車両に、いつ間にやら爆薬を仕掛けていて遠隔操作で爆発するところなんかは「いやいやそれはやりすぎ」と思いましたね。あの描写いらねーわー!

クライマックスはすごーくクライマックスっぽいクライマックスで、その直球っぷりは笑えるくらいなんですけど、そこに至る展開は意外性に満ちていて、その点もかなり満足でした。

世界観と語り口に色んな違和感を抱かせておいて、それを快感に変えさせられる珍味映画。そしてその味わいは自分にとってかなりの美味でした。新次元のアクション描写もふくめ、こいつを見て損はありませんぞ!